糸杉になって天の声を聴きたい
2024.08.15
ゴッホの「ひまわり」は有名ですが、同じようにゴッホの作品に「糸杉」を描いた絵
があります。
謎めいていて私が好きな「星月夜」は亡くなる前年の作品。
「糸杉と星の見える道」は精神病院に入院していたときのもの。
「糸杉」は耳を切った後の描いた作品。
ゴッホは糸杉を死の予感として描いたと言われています。
私も糸杉を実際に見る前までは「そうなんだ」と単純に思っていました。
しかし数年前に糸杉に出会ってからは、反対にゴッホは精神病を患っていたので
不安や閉塞感はありこそすれ、そこから抜け出したいという気持ちがあったのではないか。
その気持ちが糸杉を描くことによって表現されているのではないか思うようになりました。
糸杉には「死」「絶望」という意味があること
そしてイエスの十字架が作られたこと、
墓地に多く植えられているというようなことから、
ゴッホが精神を患っていることとが、後付けで結びつけられてしまっているのではないかと思います。
実際にゴッホは、弟への手紙に「エジプトのオベリスクの様だ」と糸杉のことを書いています
また糸杉には神聖な信仰の対象でもあり英雄を象徴しているという面もあります。
ゴッホは高く空に聳え立つ姿から却って力強く天に伸びる糸杉に生きるパワーを見出していたのではないかとも思います。
私が糸杉を見たのは、数年前トルコのトプカプ宮殿に行ったときです。
三角屋根のある皇帝の門を通り、至福の門へと向かう道の両側に糸杉の並木があります。
真っ直ぐ天に向かって伸びた木を見て、何という素直で力強い木だろうと思っていました。
するとガイドさんが「イトスギ」だと教えてくれました。
糸杉の真っ直ぐさに見取れていると、ふとゴッホの「星月夜」を思い出しました。
そして、直感で彼は死の予感として糸杉を描いたのではなく、天と地を繋ぐ物として描き、
糸杉のパワーにすがったのだと納得しました。
宮殿のハレムにも、美しいブルーのタイルに大きく糸杉が描かれていました。
スルタンのお気に入りだったようです。
イスタンブール滞在中に、糸杉が見たくて2~3回トプカプ宮殿に足を運びました。
糸杉の間から見上げた天空の青さと広大さは忘れられません。
その時生まれ変わるなら「糸杉でもいいんじゃない?」なんて密かに思ったことがあります。
そう、何回生まれ変わったことか・・・、
今度は人ではなく、「山の上てっぺんに生える糸杉」になって、天の声や風の歌を聴いて暮らしたいものです。