読書の魔法――『ザリガニの鳴くところ』がくれた旅
2025.10.03

趣味のひとつに「読書」があります。
ただ、私は読むペースがとてもゆっくりで、一冊を読み終えるまでに何日もかかることも珍しくありません。
長編になると2~3か月を要することもあり、年間に読める冊数は決して多くないのですが、それでも本から得られる知識や感動は尽きることなく、いつも心を惹きつけられています。
そんな私に、最近ある本好きの知人が「ぜひ読んでみて!」と貸してくれたのが『ザリガニの鳴くところ』。
2021年の本屋大賞・翻訳小説部門で第1位を受賞した話題作です。
知人は、その豊かな表現力と緻密な描写に深く感動したと話してくれました。
物語の舞台は、アメリカ・ノースカロライナ州の湿地帯。
装画には、茜色の空に染まる湿地と、その中を小舟で進む少女の姿が描かれており、一目で惹きつけられる美しさがありました。
とはいえ500ページもの分厚いハードカバー。
読むのが遅い私には「果たして最後まで読めるのだろうか」という不安がつきまといました。
ところが読み始めると、その心配はあっという間に消え去ります。
湿地帯の自然、そしてひとりぼっちで生き抜く6歳の少女カイアの世界にぐんぐん引き込まれ、気づけば夢中でページをめくっていました。
カイアの成長とともに広がる植物や動物の知識は、読者をまるで生物学の世界へと導きます。
また、湿地で起きる殺人事件や、彼女の淡い恋の行方――どれも目を離せない展開ばかり。
気づけば、わずか5日間で読み終えていたのです。
読み終えたときの達成感は言葉に尽くせません。
本を読んだというよりも、ノースカロライナの湿地をカイアと一緒に旅したかのような、不思議で豊かな体験をさせてもらいました。
この作品を生み出した作家ディーリア・オーエンズさん、そして素晴らしい本との出会いをもたらしてくれた知人に、心からの感謝を捧げたいと思います。